TOPICS 第1回 難燃化技術の最近の動向

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第1回 『難燃化技術の今後の研究の動向


 西沢 仁(難燃材料研究会顧問、前会長)



現在の難燃化技術は高い壁にぶつかっており,やや停滞している感がある。
これをブレークスルーする必要を強く感じているが,そう簡単ではない。原点に返り研究の方向を考えることも大切である。
最近の難燃化技術に要求される特性は次のような項目が挙げられる。
(1)難燃効率の高い難燃系の開発
(2)環境安全性,リサイクル性に優れた難燃系の開発
(3)機能性,耐熱性,耐久性,成形加工性に優れた難燃系の開発
現在推進されている難燃化技術の研究は表-1に示すような気相,固相における難燃化機構を適用し,表-2に示すような難燃剤との複合化による研究が行われてきている。しかしながら,現在最も難燃効率が高いのは,臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの相乗効果系とIntumescent難燃系ではないだろうか。
現在,環境対応型難燃系として使用されている水和金属化合物,一般のリン化合物を中心とした系は残念ながら難燃効率が低い。これからの研究は,この難燃効率がより高い難燃系の開発が強く望まれる。それは燃焼の開始(立ち上がり)時に効果の高い難燃系の開発である。火災は立ち上がりを抑制することが最も効果が高いことは誰でも理解できることである。世界の殆どの難燃性規格は燃焼の立ち上がりに難燃効果が高いことを要求している。表―1に示す気相での難燃機構がこれに相当し,
350~400℃での燃焼立ち上がりの気相での難燃効率を上げると共に,固相での燃焼バリヤー効果を早期に示す系の開発が好ましい。
そのためには難燃化機構の基本的な研究がさらに重要になる。従来の難燃化技術の研究を考えると基本的に難燃化機構に関する研究が不足していることを痛感する。気がつくだけでも表-3に示すような項目を挙げることができる。
また,評価技術の進歩も必要である。複雑な燃焼現象を制御する過程を更に細かく観察し,燃焼抑制の方向を探り出せるような評価技術が必要になるだろう。現在使用されているコーンカロリメータは,発熱量,燃焼残渣量,各種ガス発生量の評価が可能であり,現状では最も優れた評価方法であるが,燃焼過程を実際に観察しながら微妙な燃焼抑制効果を見落とさない技術が有効である。
これから早急に実用化が迫られている課題として次のようなテーマがあるが,この研究会が少しでもこうした課題に貢献できる活動ができるよう努力したい。
(1)環境対応型高難燃性ポリオレフィン材料の開発
(2)電気電子機器,OA機器用耐熱性樹脂(PA,PET等)用難燃系の開発
(3)汎用エンプラ(PS,ABS等)高難燃性環境対応型材料の開発
(4)生分解性高難燃材料の開発


表-1 現用難燃系の難燃化機構

難燃化機構

           代 表 例

(1)気相

1)ハロゲン化合物,リン化合物によるラジカルトラップ効果
2)ハロゲン化合物+三酸化アンチモン(硼酸亜鉛,ZnS等)による相乗効果
3)水和金属化合物による脱水吸熱反応
4)窒素化合物による不活性ガスの発生と酸素希釈,遮断効果

(2)固相

1)リン化合物によるチャー生成
  カーボンチャー,-POC-結合生成物
2)水和金属化合物+シリコーン化合物による無機断熱層の生成
3)水和金属化合物+硼酸亜鉛による無機断熱層の生成
4)Intumescent系(APP+窒素化合物)による発泡チャーの生成
5)ナノコンピジット+従来難燃系による酸化ケイ素+チャーの生成



表-2 難燃剤の最新動向と製造メーカー,

技術動向

製造メーカー

ハロゲン系

WEEERoHSの可決によるPBB,PBDEpenta,octa)の使用禁止,その他使用可
現用難燃剤
1)脂肪族臭素系-HBCD,TBBA,TBBS
2)芳香族種粗景-TBBA-エポ,HBB,TBPTBP,Br-PS3)塩素系  -塩パラ,デクロランクロレンド酸,  無水クロレンド酸
現用難燃系(相乗効果)
 三酸化Sb+臭素系,塩素系難燃剤
 硼酸亜鉛,硫化亜鉛,錫酸亜鉛,酸化Mo +臭素系,  塩素系難燃剤

GLCDSBCアルベマール日本,東ソー,マナック,日宝化学,三井化学ファイン,ジャパンエポキシ,三菱ガス化学-GLC,第一エフアール,帝人化成,大日本インキ化学,坂本薬品,東都化成,日立化成,日本化薬,旭化成エポキシ,オキシデンタルケミ,味の素ファインテクノ

リン系

現用難燃剤
1)モノマー型リン酸エステル-TPPTCP
2)縮合型,反応型リン酸エステル-BDP, RDP,      BPA-DPBPA-DC,反応HCABDP,ホスファゼン
3)Intumescent系-FP-2100,APP+窒素化合物
4)赤リン,赤リン+膨張性黒鉛
5)リン酸エステルアミド等
現用難燃系
リン系+難燃助剤(有機金属化合物,ナノフィラー,窒素化合物,シリコーン化合物等)

大八化学,旭電化,第一エフアール,GLC,アルベマール日本,三井化学ファイン,味の素ファイン,日本化学工業,燐化学,クラリアント,三光,四国化成

無機系

現用難燃剤
水酸化Al,水酸化Mg,,アンチモン化合物,硼酸塩,錫酸亜鉛,Mo化合物,ナノフィラー(MMT,ナノ水和金属化合物,シリカ),Zr化合物
現用難現燃系
水和金属化合物+難燃助剤
ナノフィラー+従来難燃剤
低有害性ガス,低発煙性ガス化用
微粒子炭酸Ca,炭酸金属塩,水和金属化合物
銅酸化物,酸化鉄,フェロセン,有機金属化合物

日本精鉱,山中産業,東湖産業,鈴裕化学,三井化学ファイン,味の素ファイン,GLC,第一エフアール,昭和電工,住友化学,日軽金,神島化学,三和ケミカル,日産化学,協和化学,堺化学,アルベマール

その他

1)シリコーン化合物
2)ヒンダートアミン化合物
3)窒素化合物
  メラミンシアニュレート,トリアジン化合物
4)有機金属化合物
 エチレンジアミン4酢酸銅,パーフルオロブタンスルフォン酸カルシウム等

東レダウ,信越化学,東芝GEシリコーン,チバスペシャリティケミカルズ,三和ケミカルDSMジャパン


表―3 今後研究したい難燃化機構

種 類

気相における難燃化機構

臭素化合物+金属酸化物系の難燃効果の温度特性
臭素系化合物+新規相乗効果剤
リン化合物単独
リン化合物+新規難燃助剤(有機金属化合物)
水和金属化合物+リン化合物,窒素化合物その他助剤
窒素化合物+リン化合物+助剤

固相における難燃化機構

リン化合物の構造とチャー生成効果
リン化合物+新規難燃助剤
水和金属化合物+新規難燃助剤
Intumescent系(新規複合系)
Intumescent系+新規助剤(各種金属化合物等)

低発煙化機構
低有害性ガス化

ポリマー構造と発煙性,発生ガスの関係
金属化合物の低発煙効果,低有害性ガス化効果

ナノコンポジット難燃系

ナノフィラーの種類,量,分散性,挿入有機化合物
従来難燃系との併用系

新規相乗効果
難燃触媒,難燃助剤

遷移金属化合物,無機硫黄化合物,アルカリ金属化合物,アルカリ土類金属化合物,各種有機勤続化合物
芳香族系エンプラ


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